再生可能エネルギーの拡大を目指して、2012年に固定価格買取制度が改正されました。これをきっかけに、太陽光発電をはじめとした、再生可能エネルギー発電所が急速に拡大し、いまや日本各地に建てられています。

普及する再生可能エネルギー発電所に伴って、発電所を管理・保守し、安全に効率よく運営するための電気主任技術者が数多く求められることになりました。

電気主任技術者の資格試験、求人状況について解説します。

電気主任技術者の資格

電気主任技術者は、国家資格です。

資格を取得することで、発電所や変電所、工場やビルなどの電気設備の保守監督を行うことができます。電気設備を設置している場合、規模に応じて電気主任技術者の選任が法律で義務付けられています。

オフィスビルや商業施設など非常に数多くの施設で電気設備が設置されているため、需要が途絶えることがなく、常時求人募集がかけられています。

電気主任技術者試験は通称「電験」と呼ばれており、電気設備関連の資格のなかで認知度も高く、登竜門的な資格となっています。

資格の種類

電圧の範囲

第一種から第三種まで3種類があり、種別に応じて取り扱うことができる電圧が異なります。すべての電気工作物を扱える第一種の難易度が最も高く、第三種は5万ボルト未満(出力5千キロワット以上の発電所を除く)という制限があります。

電圧の範囲

第一種 第二種 第三種
電圧の範囲 すべての事業用電気工作物 電圧が17万ボルト未満の事業用電気工作物 電圧が5万ボルト未満の事業用電気工作物
(出力5千キロワット以上の発電所を除く)

資格取得の方法

電気主任技術者の資格を取得するには、大きく分けて二つの方法があります。資格試験に合格する方法と、学歴(または、下位の取得資格)と実務経験により取得する方法です。

経済産業省が認定した学校の電気工学に関する学科で所定の単位を取得しており、一定以上の実務経験がある場合、試験を受けなくても資格を取得することができます。また、第三種の資格取得と所定の実務経験で第二種を取得できます。同様に、第二種資格取得と所定の実務経験で第一種の資格を取得できます。

そのため、いきなり第一種や第二種の資格試験を受けるのではなく、まず第三種の合格を目指し、それ以上の資格取得は所定の実務経験を積んだ後に取得申請をするという方もいます。

資格取得のフローについては、(一財)電気技術者試験センター。認定校については経済産業省、実務経験の年数については(公社)日本電気技術者協会のウェブサイトがそれぞれ詳しいです。下記にリンク先と抜粋を記載します。

第三種電気主任技術者

資格取得のフロー(電気技術者試験センター)
認定校の一覧 ※第三種、第二種、第一種が同ファイルです。(経済産業省)

学歴又は資格 実務内容 経験年数
大学(認定校)の電気工学に関する学科において、所定の科目を修めて卒業した者 電圧500ボルト以上の電気工作物の工事、維持又は運用 卒業前の経験年数の2分の1と卒業後の経験年数の和が1年以上
短期大学または高等専門学校(認定校)の電気工学に関する学科において、所定の科目を修めて卒業した者 卒業前の経験年数の2分の1と卒業後の経験年数の和が2年以上
高等学校(認定校)の電気工学に関する学科において、所定の科目を修めて卒業した者 卒業前の経験年数の2分の1と卒業後の経験年数の和が3年以上

※ 出典:公益社団法人 日本電気技術者協会のウェブサイトより一部抜粋・編集。

第二種電気主任技術者

資格取得のフロー(電気技術者試験センター)
認定校の一覧 ※第三種、第二種、第一種が同ファイルです。(経済産業省)

学歴又は資格 実務内容 経験年数
大学(認定校)の電気工学に関する学科において、所定の科目を修めて卒業した者 電圧1万ボルト以上の電気工作物の工事、維持又は運用 卒業前の経験年数の2分の1と卒業後の経験年数の和が3年以上
短期大学または高等専門学校(認定校)の電気工学に関する学科において、所定の科目を修めて卒業した者 卒業前の経験年数の2分の1と卒業後の経験年数の和が5年以上
第三種電気主任技術者免状の交付を受けている者 第三種電気主任技術者免状の交付を受けた後5年以上

※ 出典:公益社団法人 日本電気技術者協会のウェブサイトより一部抜粋・編集。

第一種電気主任技術者

資格取得のフロー(電気技術者試験センター)
認定校の一覧 ※第三種、第二種、第一種が同ファイルです。(経済産業省)

学歴又は資格 実務内容 経験年数
大学(認定校)の電気工学に関する学科において、所定の科目を修めて卒業した者 電圧5万ボルト以上の電気工作物の工事、維持又は運用 卒業前の経験年数の2分の1と卒業後の経験年数との和が5年以上
第二種電気主任技術者免状の交付を受けている者 第二種電気主任技術者免状の交付を受けた後5年以上

※ 出典:公益社団法人 日本電気技術者協会のウェブサイトより一部抜粋・編集。

資格試験

資格試験は、一般財団法人電気技術者試験センターが全国で年1回実施しています。

受験資格に、実務経験の年数や学歴、年齢などの制限はありません。第三種、第二種の資格を取得していなくても、いきなり第一種の試験を受けることもできます。

第三種は理論、電力、機械、法規の4科目からなるマークシート方式の試験です。有効期間3年間の科目別合格制のため、例えば、理論と電力だけ合格した翌年、機械と法規を合格すれば資格取得できます。

第一種、第二種はマークシート式の一次試験に加えて、記述式の二次試験があります。一次試験に合格し、二次試験が不合格だった場合、翌年の一次試験が免除されます。

日程・費用

例年申し込み期限は5月下旬から6月上旬です。受験案内・申込書の配布は5月上旬頃にあります。受験案内にその年の日程が記載されますので、入手してスケジュールを立てるようにしましょう。

受験手数料は、郵便申込とインターネット申込で金額が異なり、インターネット申込の方が若干安いです。試験に合格した後、免状交付の手数料として2,350円かかります。

第一種 第二種 第三種
受験案内の配布 5月上旬 5月上旬 5月上旬
受付期間 5月下旬~6月上旬頃まで 5月下旬~6月上旬頃まで 5月下旬~6月上旬頃まで
一次試験 9月上旬頃 9月上旬頃 9月上旬頃
二次試験 11月中旬頃 11月中旬頃
費用 7,200~7,550円 14,750~15,150円 14,750~15,150円

試験内容

第一種 第二種 第三種
一次試験 理論、電力、機械、法規の4科目
マークシート方式
理論、電力、機械、法規の4科目
マークシート方式
理論、電力、機械、法規の4科目
マークシート方式
二次試験 電力・管理、機械・制御の2科目
記述方式
電力・管理、機械・制御の2科目
記述方式

なお、二次試験は科目別合格制はありません。

合格率

第3種の合格率が10%弱。第2種が4~10%弱、第1種が4~7%程度です。

合格率が1桁台と難易度の高い資格です。

科目別合格制のため、初めからすべての科目の合格を目指さず、数科目ずつ2年に分けて合格を目指す方もいるようです。その場合、受験費用が回数分かかってしまいます。

第三種 電気主任技術者の合格率推移(平成20年~令和2年度)

第三種 電気主任技術者 合格率推移

※ 一般財団法人 電気主任技術者試験センターのウェブサイトを基に作表。
※ 受験者数は、1科目でも出席した方の合計。

第二種 電気主任技術者の合格率推移(平成20年~令和2年度)

第二種 電気主任技術者 合格率推移

※ 一般財団法人 電気主任技術者試験センターのウェブサイトを基に作表。
※ 受験者数は、一次試験免除者と一次試験受験者の合計。

第一種 電気主任技術者の合格率推移(平成20年~令和2年度)

第一種 電気主任技術者の合格率推移

※ 一般財団法人 電気主任技術者試験センターのウェブサイトを基に作表。
※ 受験者数は、一次試験免除者と一次試験受験者の合計。

電気主任技術者の求人

電気主任技術者の求人

電気主任技術者のキャリアは主に下記の4つ分かれます。

  • 再生可能エネルギー企業
  • ビル、商業施設、工場、建設会社
  • 電気保安協会
  • 個人事業主、独立開業

最近の求人のトレンドとしては再生可能エネルギー業界の保守運用の求人が増加傾向にあります。

再生可能エネルギー企業

自社の発電所の保守運用管理

自社で所有している再生可能エネルギー発電所の運用管理を行う業務です。外資系企業が多く、運用対象には定格出力が2,000kW以上の特別高圧連系の発電所(メガソーラー等)が含まれます。

特別高圧連系(特高)の場合、電気主任技術者の外部委託が認められていません。また、5,000kW以上の発電所では、第二種電気主任技術者が必要となります。

そのため、年収が高い求人が多いです。メガソーラーを設置するには、広い土地が必要なため、勤務地は地方の山間部が多くなります。

  • 資格:第二種電気主任技術者
  • 年収:600万円~1000万円
  • 地域:地方の山間部に多い

顧客の発電所の保守・運用管理

顧客から太陽光発電の保守運用を請け負う会社で行う業務です。顧客の比較的規模の小さい太陽光発電の保守・運用を行います。土地が小さくても設置できるため、主要都市に勤務し、社用車で近隣の太陽光発電所を回って保守する働き方が多くあります。

50kW未満の低圧、50~2000kW未満の高圧の太陽光発電所を扱うことが多く、必要な資格は第三種電気主任技術者です。

  • 資格:第三種電気主任技術者
  • 年収:450万円~600万円
  • 地域:主要都市部に多い

再生可能エネルギー業界の推移と今後

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が1990年に発表した第1次報告書では、「人為起源の温室効果ガスは気候変化を生じさせる恐れがある。」と表現されました。2013~14年公表の第5次報告書にいたっては「温暖化には疑う余地がない。20世紀半ば以降の温暖化の主な要因は、人間の影響の可能性が極めて高い。」と明記されました。

2015年には、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」ことがパリで採択されました(パリ協定)。日本は2030年度の温室効果ガスの排出を2013年の水準から26%削減する目標を定めました。

EUは、2035年にガソリン車などの新車販売を禁止する方針を発表し、世界中の大企業がこぞって事業活動によって排出するCO2をゼロにする宣言を行っています。

気候変動のリスクは世界的に認識され、再生可能エネルギー、電気自動車の普及拡大、ESG、SDGsなどの取り組みは国際レベルから、企業、個人レベルまで様々な階層で強く意識されています。

再生可能エネルギーの推移

世界で最も大きい発電設備の電源は、再生可能エネルギー

国際エネルギー機関(IEA)の分析によると、2015年に再生可能エネルギーの発電設備の容量は約2,000GWになり、世界で最も容量の大きい電源となりました。その後も、毎年180GWのペースで増加しています。

出典:「国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案」(資源エネルギー庁)

日本の再生可能エネルギーの推移

2012年の固定価格買取制度をきっかけに、再生可能エネルギーの発電量が増加しています。電源構成比に占める再生可能エネルギーの割合は、2010年に約9.5%だったのにくらべて2019年は約18.1%と倍近く増えています。2030年に向けては22~24%まで拡大することをエネルギー基本計画で定めています(第5次エネルギー基本計画)。

出典:「総合エネルギー統計」(資源エネルギー庁)を基に作表。

再生可能エネルギー業界のキャリア

再生可能エネルギー業界は、今後ますます拡大していくでしょう。

電気主任技術者の資格取得者は、再生可能エネルギー発電所を安全に、安定して稼働させるためになくてはならない人材です。

今後、成長が見込まれる業界、なおかつ社会貢献を実感しやすい業界として、再生可能エネルギーに携わることは魅力的な働き方だと考えています。

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